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教育ICTを通じて「新しい学び」を提案する教育者チーム
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The Other Side
〜イノベーターたちの素顔〜
iTeachersメンバーや、教育ICTの分野で活躍する先生たちの取り組みをレポートするWeb連載。iTeachersのマネージャー的存在である、ライターの神谷加代さんが、それぞれの教育現場を取材。保護者そして主婦の視点から、先生たちの素顔に迫ります。
小学生2人の母親。結婚を機にサンフランシスコに渡米し、10年の在米生活を経て2010年に帰国。その後、主婦ブロガーとして 「家庭×教育ICT」に関する話題をメインにした『主婦もゆく iPad一人歩記』を執筆。家庭や教育におけるICTのあり方を主婦目線で描き、教育関係者をはじめとする多くの読者から支持を得ている。現在は教育ICTの分野を中心にライターとして活動中。著書に『iPad教育活用 7つの秘訣』
主婦ブロガー/ライター
神谷 加代
Kamiya Kayo
<記事一覧>
第10回 玉川大学 小酒井 正和 先生 / 俊英館 小池 幸司 先生
大塚商会「MacZoo 2014 in Tokyo」 セミナーレポート
2014年8月26日、大塚商会本社(東京都千代田区)にて、アップル関連の総合イベント「MacZoo 2014 in Tokyo」のイベントが3年ぶりに開催されました。そのセミナーに玉川大学の小酒井先生&俊英館/教育ICTコンサルタントの小池先生が登壇されたので行ってきました。
まず登壇したのは、玉川大学工学部マネジメントサイエンス学科の小酒井正和先生。プレゼンタイトルは「iPadやMacを取り入れたビジネス教育:クラウド・ネイティブな若者を社会へと導くには?」。教育系のセミナーですが、この後、小酒井先生ご自身はオーストラリアに海外出張だとかで、出で立ちがバカンス風なのは気のせいか・・・
小酒井先生は、デジタルネイティブ世代である今の大学生がどのような感覚の持ち主で、どんな風にスマートデバイスを使うのかを大人はもっと知る必要があると言います。確かに「最近の若者は・・・」というような視点で見てしまうと、大人からは理解しづらい部分が多いですが、彼らが育ってきた時代背景から全体的な特性を知ることは、いずれ社会で彼らと接する側にとっても大切なことであるといえるでしょう。
その特性のひとつとして小酒井先生は、「今の大学生は、色々なことを同時進行で進めることができるタイプも多く、大人が思っている以上にマルチタスクを自然とこなしている」と分析します。この振る舞いが、大人から見れば、彼らがまるで気まぐれで我慢が足りないように見えてしまっていると指摘。
しかし、小酒井先生自身の考えでは、人間はいくつもの仕事を抱えてマルチタスクでこなしている時ほどそれぞれの仕事が頭の中で勝手に結びついてクリエイティブな発想が生まれるとし、これを自然とこなせるデジタルネイティブたちに対して、周りの大人は理解を示して欲しいと訴えます。
21世紀型スキルで最も注目されている能力が、創造性とイノベーションであることから、彼らのデジタルデバイスに対する“感覚的なもの”やアイデアが生まれる過程に対して、大人はもっと知る必要があるようです。
一方で、小酒井先生は、今の大学生がこれから必要な能力については、“デバイスをいかに使いこなせるか”よりも、「テクノロジーとテクニックを兼ね備えた能力が重要視される時代がきている」と言います。
学生のクリエイティビティを認めつつも、アイデアを形に変え、実行するというようなモデル化に関しては、まだまだ経験値を豊富に持つ大人がしっかり教えていく必要があると指摘。そのためにも、学生が社会に出るキッカケになるインターン時には、しっかり大学も関わっていきたいと言います。「企業⇔学生」の間でインターン経験を終わらせるのではなく、「企業⇔学生⇔大学」という双方向な形で、学生をコーチングできるのが理想だと提案しています。
続いて、小酒井先生の発表で途中出場した現役の大学生によるプレゼンをご紹介。玉川大学工学部1年生の須田育実さんです。彼女は大学1年生ながらも、小酒井ゼミの見習い生として研究室のお手伝いしているとか。そんなバイタリティある彼女は、感性と技術を兼ね揃えたデザイナーになるのが将来の夢なんだそう。かっこいい!
中高時代に美大附属に通っていた須田さんは、早くからMacBook Proを使用していたといいます。iPhoneを持っていたものの、高校2年生の時にはYou Tubeやゲームがしたくてお年玉でiPadminiを購入したとか。現在はゲームをすることは少なくなったけれども、ウェブ閲覧をしたり、PCとiPadminiとの間でデータをやりとりさせて動画・写真編集に活用しているといいます。
大学の友達は、大半がスマホを所有し、友達との連絡ツールはもっぱら「LINE」が主流。友達の電話番号やメールアドレスは知らなくても“LINEのIDは知っている”という状況が普通だといいますから、デジタル・イミグラントの大人とは感覚が随分異なります。
「さとり世代」と呼ばれている自分たちは、インターネットを利用して育ってきた世代で、SNSやブログも中学時代には経験していたといいます。ネットを通して現実世界を知ることも多く、“分からないことがあれば、インターネットで調べればなんとかなるだろう”という気持ちも心で思っている、と本音を語ってくれました。
周りの大人に対しては、「デジタルネイティブが持つ能力を生かして欲しい」と訴えました。自分たち世代は、大人が考えている以上にデジタルデバイスを使える。たとえ分からないことがあっても、ある程度までは、自分で調べて進めることができると主張。学校現場においても、導入部分などは、先生から直接教えてもらうよりも、学生同士で教え合った方が早く習得できると感じているといいます。「先生に教えてもらうことも大切だと思いますが、学生が“始めから使える”という前提で進めてくれる方がいい」と話していました。
最後は、教育ICTコンサルタントの小池幸司先生。プレゼンの直前まで控え室でスライドの調整をしていた小池先生ですが、大丈夫なんかい?
小池先生は、俊英館にiPadを導入したキッカケや、同社が展開する学習塾での活用事例・ポイントなどを冒頭で説明。なかでも、導入のキッカケに関しては、同じくiTeachersの一人である杉本真樹先生との出会いのエピソードを語り、「iPadが医療の世界を変えた事例を見て、教育が変わるために何かしたいと思った」と当時を振り返ります。
その後は、他のiTeachersの先生や、小池先生が取材に訪れた学校のiPad活用事例を紹介。使用しているアプリ、学習用途、運用ルール、授業形態など、これからiPad導入を検討・実施する教育機関が参考になるノウハウを、活用現場の写真や映像と共に語られました。また、地域や条件、校種や立場も異なる先生たちがどんな思いを持って教育現場でiPadを活用しているのかについても言及。取り組みが上手くいっている根底には、iPadだけでなく先生たちの思いが、そこにあることが大切ではないかと伝えます。
iPadを教育現場で活用するとなると、「デジタル VS 紙」という対立構造が生まれてしまいがちだと小池先生。ところが上手く活用するiTeachersの先生やその他の学校の取り組みを見ると、両方を生かす方法で進めていることが多く、紙をやめて全てをデジタル化する発想はないといいます。教育現場におけるデジタル化、ICT化は、アナログを掛け合わせて使うものだと捉えることが重要で、「アナログをゼロにしてデジタルを入れるのは望ましくない」と自身の考えを述べました。
「教育は変えていく必要がある」と小池先生。しかし、今までの教育を否定することから始めるのは避けたいと言います。ICTの導入は、従来の教育を否定するためのものではなく、アナログの上に新しいものを積み上げていくような形が理想で、それがないと教育現場でのイノベーションは起こりづらいだろうと指摘します。「温故知新のイメージを持つことが大切ではないか」、この言葉で小池先生はプレゼンを締め括りました。
筆者KAYO の ひとりごと
須田さん、先生よりも上手なプレゼンをしてはいけません。
そこは、気をつかいましょう(笑)
「世界一受けたい!親子iPad授業 〜iTeachers Special Live in Yokohama 〜」レポート
iTeachersカンファレンス 2014 Spring 〜教育ICT、成功への分岐点〜 (前編)
永野 / 片山 / 小酒井 /金子 / 栗谷 / 小池 先生
iTeachersイベントレポート<後編>
「iTeachers × iStudents プレゼンLIVE
〜ICTで変わる“新しい学び”のアイデア〜」
永野 / 片山 / 小酒井 /金子 / 栗谷 / 小池 先生
iTeachersイベントレポート<前編>
「iTeachers × iStudents プレゼンLIVE
〜ICTで変わる“新しい学び”のアイデア〜」