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iTeachers:
The Other Side
〜イノベーターたちの素顔〜

iTeachersメンバーや、教育ICTの分野で活躍する先生たちの取り組みをレポートするWeb連載。iTeachersのマネージャー的存在である、ライターの神谷加代さんが、それぞれの教育現場を取材。保護者そして主婦の視点から、先生たちの素顔に迫ります。



小学生2人の母親。結婚を機にサンフランシスコに渡米し、10年の在米生活を経て2010年に帰国。その後、主婦ブロガーとして 「家庭×教育ICT」に関する話題をメインにした『主婦もゆく iPad一人歩記』を執筆。家庭や教育におけるICTのあり方を主婦目線で描き、教育関係者をはじめとする多くの読者から支持を得ている。現在は教育ICTの分野を中心にライターとして活動中。著書に『iPad教育活用 7つの秘訣』

主婦ブロガー/ライター
神谷 加代

Kamiya     Kayo

<記事一覧>

第1回 千葉県立袖ヶ浦高等学校・情報コミュニケーション科 永野直先生

外部の人との繋がりのなかで、実感をともなった学びの場を与えてあげたい!

iTeachers や教育ICT の分野で活躍する先生たちを取材してご紹介するiTeachers Web連載『iTeachers: The Other Side』がスタートしました。記念すべき第1回に登場していただくのは千葉県立袖ヶ浦高等学校・情報コミュニケーション科の永野直先生です。先日、永野先生が受け持つ1年生の「情報コミュニケーション」の授業でプレゼンテーションの発表会があり、その模様を取材してきました。

千葉県立袖ヶ浦高等学校・情報コミュニケーション科(以下、袖ヶ浦高校)は、「e-Learning Award 2012フォーラム」で最高賞の『日本e-Learning大賞』を受賞するなど、その取り組みが高く評価されている学校ですが、そんなトップを走るイメージとは裏腹に、学校はのどかな田園地帯にあります。

 

全国の公立高校としては初めてBYODを実施した学校なので、どれだけ最先端な環境にあるのだろうと思いきや、校舎もいい感じの使用感で、ここに来ると、このミスマッチがかえってICTを身近なものに感じさせてくれるような気がします。

 

取材にお邪魔したのは、永野先生が受け持つ1年生「情報コミュニケーション」(学校設定科目)の授業で、その日はプレゼンテーションの発表会。テーマは「自分の身近なコミュニティを紹介する」というもので、生徒たちは、学校、学科、部活動、地域のなかから好きなもの選び、Keynoteで作った資料をもとに発表しました。

 

このプロジェクトは計5時間の枠で下記のような形で進められたそうですが、永野先生が一番こだわったのが、本番の発表会に「外部の人を招き、アドバイザー役として参加してもらう」ことだったよう。

 

 

1時間目:課題説明(紙の)ワークシートを配ってプレゼンの流れをつくる

2時間目:資料作成  Keynote でワークシートに沿って資料を作成

3時間目:資料作成  後半は友達に見てもらって改善点を指摘しあう

4時間目:改善点を直して、最終リハーサル

5時間目:本番                           

 

 普段、プレゼンといえば「クラス内」「友達相手」が主な生徒たち。今回は、「外部の人に見せる」ことを念頭に置きながら課題に取り組んだようです。

 

 

「外部の人を招いたのは、『相手』によって『伝え方』が変わることを学んでほしかった」と永野先生。

 

「話し方や資料の作り方、身振りや目線など、伝える相手によってそれらは異なり、話し手がひとりよがりにならないことや、逆に、伝わらない時は自分の『伝え方』に原因があるのではないかと見直すプロセスを生徒に体験してもらいたかった」ということで、このプレゼン発表会を生徒の“気づきの場”にしたい、そんな思いが伺えました。

 

発表会には、外部から教育関係者、企業、大学生など様々な立場の大人が10名ほど参加し、各グループにひとりのアドバイザーがつくような形がとられました。グループ内では司会進行役、動画撮影などの役割も分担され、発表者のプレゼンが終われば、アドバイザーと生徒たちが互いに意見交換しました。

 

 実際に私もアドバイザーとして参加させてもらったのですが、私のグループの生徒は、皆とても緊張していたものの、一生懸命練習した様子も垣間見られて、この課題に真摯に取り組んだ様子が伝わってきました。

 

 

生徒たちは、言葉だけでなく、写真や資料を使ってイメージで伝えようとしたり、アニメーション機能や画像編集などを上手く使って視線を惹きつけたりするなど、スライドには随所で工夫の跡が見られました。またテーマが「自分の身近なコミュニティ」であったことから、全体的に個性豊かに、その楽しさや魅力がスライドにおさまっていたのも好感でした。ただ、その一方で、プレゼンの展開は、高校生にありがちな自分の興味の範疇で進めている一面もあり、そこは、社会人の視点でアドバイスをさせてもらいました。

 

 

永野先生からの事前説明で、「外部の人からアドバイスや指摘をもらいながら、物事には違う視点もあることを知ってほしい」とあったのですが、確かに、いつも限られた友達やコミュニティの中で生活している高校生にとってみれば、たったひとりの、見ず知らずの大人との接点が、“気づき”のキッカケになるのかもしれません。

 

 

そういう意味で、高校1年生の比較的早い段階で、このような体験をし「相手」を意識するというマインドを持ったり、「違った視点の大切さ」に気づいたりできる、この機会は大きな意味を持つだろうと感じました。

 

 

実際に、グループ内の意見交換でも、生徒たちは熱心に大人の話に耳を傾けていたのがとても印象的でした。自分に向けられたアドバイスだけでなく、友達に向けられたアドバイスも熱心にメモに残している姿には、この機会がいかに生徒にとって特別で、貴重な時間であるかを知ることになりました。また、生徒の大半が「次のプレゼンを頑張りたい」「もっとプレゼンが上手くなりたい」などを感想に書いていることから、次へのモチベーションに繋がっているのも頼もしいです。

 

 

「教室内で、『伝える』時には相手がいて、その人を意識して話すことが大切だと指導しても、学校というコミュニティでは対象が“教師”か“友達”になってしまい、生徒たちは、なかなかその大切さを実感できず、自分たちだけで分かるような表現や話し方になってしまいます」と永野先生。

 

 

「ところが、外部の人が来るという前提でこの作業を進めた場合は、資料づくりや話し方も、当然違ってくるわけで、教師が言葉でいくら説明しても伝わらなかった部分を、生徒に実感させることができます」

 

 

また、そこからさらに言われるのには、「コミュニケーション能力のように、これからの社会を生き抜くために必要だと言われている能力の多くは、聞いているだけの授業ではなかなかその大切さが理解できないし、教師がいくら言葉でその必要性を説明しても生徒は実感できないと思っています。

 

ところが、実際に社会に出ている人や立場の違う人と繋がって、その方々から必要性を説いてもらうと、生徒は意外と『そうなのか』と受け入れることができます。この、一瞬の共感や気づきが大切だと感じていて、“実感しながら学んでいける”、そのための環境づくりにこだわりたいと思っています。外部の人を招き、『繋がりの場』を持つことは、そのひとつの形です」

 

 

袖ヶ浦高校では、1年生にプレゼン発表会、2年生はポスターセッション、3年生は課題研究発表会があり、いずれも外部の人を招いて行う予定だとか。今回、取材させていただいた1年生の生徒たちが、3年生でどんな発表をするのか、いまから楽しみです。

 

 

筆者KAYO の ひとりごと

「生徒を前にした永野先生を初めてみたけど、やさしい喋り方でびっくりした。履いてたスニーカーも袖高とおんなじくらい古くてびっくりした・・・(笑)」

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